「Salience Networkの損傷とDefault Mode Networkへの影響」
近年、Salience Network (SN)とDefault Mode Network (DMN) の相互作用は認知機能のコントロールに重要であるとされています(Fransson, 2005; Kelly et al., 2008; Sridharan et al., 2008;
Menon and Uddin, 2010; Bonnelle et al., 2012). 特にcognitive control proposesモデルの一つとしてSNのkey regionであるright anterior insula (rAI)がDMNを含む他のネットワークの活動に相互作用を持っていることが報告されています(Sridharan et al., 2008; Chiong et al., 2013)。今回は外傷性脳損傷(TBI)、健常コントロールを対象とし、認知課題(2種類の抑制課題)遂行中の脳活動を測定することでSNの損傷がDMNにどのような影響を及ぼすのかを検討した研究を紹介致します。
対象:実験1(Stop signal task)
TBI group 1: 57例(11 females, mean age 36.7±11.5 years, range 18-62 years)
Healthy Control: 25例
実験2(Switch task)
TBI group2: 31例(10 females, mean age37.3 ±11.9 years, range 20-62 years )
Healthy Control: 20例
*30例の healthy controlがDTI撮像のみで参加
(16females, mean age 37.2±8.9 years)
実験1と実験2は異なる被験者を対象にしている
課題:実験1:Stop signal task
実験2:Switch task
両課題共にボタンで応答する。
l Stop signal taskについてはstop signal delay(SSD)の後20%の割合でstop signalが出現する。
l Switch taskについては色に応じて左右ボタンで反応する。「SWAP」の文字が出現するとボタン反応が左右逆になる
例:赤→右ボタン、青→左ボタンであるが「SWAP」出現により、赤→左ボタン、青→右ボタンと左右反応が逆転する
構造画像および機能画像:Philips Intera 3.0-T MRI scanner
T2*-weighted gradient-echo echoplanar imaging
T1-weighted wholebrain structural images
*患者はstructural brain imaging DTI を撮像
Psychophysiological Interactions(PPI)解析を実施。
rAI(島前部),dACC(前部帯状回背側部),IFG(下前頭回)の3つをseed region として座標は先行研究を参考に決定
結果:
Signal change(Stop trials versus Go trials)
A. Stopping task
controlグループにおいてPCCが有意に活動が減少する
B. Switching
controlグループにおいてrAIが有意に活動が上昇する
TBIグループはDMNの活動減少、およびrAIの活動増加の変化が乏しい
PPI analysis (seed region 3つとDMN領域)(Stopping and Switching)
Stop、Switching共にコントロールではrAI がDMNな相互作用を示す。
抑制にはrAIとDMN間の機能的関係が示唆されるが、TBIでは認められない
考察
コントロール群において反応抑制の際には通常rAIとDMNのFC増加が認められた。rAIはDMNを含むネットワークの司令塔としての重要な役割がある可能性が示唆された。またSN tractとDMN・rAIのPPI strengthに有意な正の相関が認められた。外部刺激に注意を焦点化させる際にはDMNはその負荷に応じて活動が減少する、またDMNの活動減少の失敗は注意障害と密接に関連することが報告されています(Singh et al., 2011; Weissman et al., 2006)。さらにSNおよびDMNの活動変化が大きいほどより効率的な認知コントロールができることも報告されている(Kelly et al.,2008)ことからもSNとDMNは密接な関係にあることが示唆されました。
コメント
ついつい活動が上昇する脳部位に着目しがちですが、deactivationというかたちで相互作用のあるDMN領域の活動変化も同時に着目していかなければならないことを改めて考えさせられました。また今回は反応抑制と注意の切り替えが要求される課題ですが、DMNの活動停滞は他の広範な機能に影響を及ぼす可能性が考えられるのではないかと思いました。今後は活動の背後にある密かな活動にも配慮し、研究を進めていく必要があると感じました。
http://www.jneurosci.org/content/34/33/10798.short
Sagar R. Jilka, Gregory Scott, Timothy Ham, Alan Pickering, Valerie Bonnelle, Rodrigo M. Braga, Robert Leech, and David J. Sharp. Damage to the Salience Network and Interactions with the Default Mode Network. Journal of Neuroscience. 2014; 34 :10798 –10807.
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