再発緩解型の多発性硬化症患者(MS)の40~60%には注意、情報処理能力、学習、記憶などのなんらかの認知機能障害があると報告されています。この研究では認知機能障害(特に注意機能障害)を有するMS患者を対象に、PCを用いた訓練がどのような効果を示すのか、神経心理学的検査とfMRIを用いて検討しています。
対象者は再発緩解型のMS患者26名。主な認知機能の障害が注意、ワーキングメモリー、遂行機能、情報処理速度にある患者を対象としています。この患者を無作為にRehacomというPCを用いた介入を行う群(介入群)と、PCを使用するが、単に偶数にのみ反応を求めるという訓練課題を実施する群(コントロール群)とに割り付けます。1時間のセッションを1週間に2回、連続6週にわたって実施します。介入頻度は介入群、コントロール群ともに同じです。介入前後に神経心理学的検査(SRT、SPART、SDMT、PASAT、Stroop test、TMT-AB、MMSE)、fMRI(タスクはPVSAT:視覚版のPASAT)の撮像を行い、介入前後と各群間の差を統計的に分析しています。
結果、介入後、群間で有意な差を示したのはStroop testで、介入後賦活領域に差があったのは、右の小脳、左上頭頂皮質でした。またStroop検査の成績は右小脳後部の賦活と相関していました。以上より、これまで不明確であったMS患者への認知機能への介入効果の有無が、神経心理学的検査、fMRIによる検討から、一定の効果があることを示すことができたと、筆者らは述べています。限界としてはこの研究の対象となっているMS患者が主に注意に障害のある患者に絞っている点が挙げられていますが、今後、注意以外の認知機能障害を有するMS患者に対する認知機能訓練の効果検証が期待されます。
SRT:言語学習と遅延再生課題
SPART:視空間性学習と遅延再生課題
Cerasa A, Gioia MC, Valentino P, Nistico R, Chiriaco C, Pirritano D, Tomaiuolo F, Mangone G,Trotta M, Talarico T, Bilotti T, Quattrone A. (2012). Computer-Assisted Cognitive rehabilitation of attention deficits for Multiple Sclerosis: A randomized Trial with fMRI correlates. Neurorehabil Neural Repair 27: 284-295
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Milagros Stokely (金曜日, 03 2月 2017)
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