他者から褒められることは、脳内で金銭を受け取る時と同じような仕組み−つまり報酬として−で処理されていることが明らかにされています (Izuma et al., 2008, Neuron)。今回ご紹介する研究は、他者から褒められると課題に対するパフォーマンスが高まるというものです。下記のリンクに分かりやすく研究内容がまとめられたプレスリリースが掲載されています。今回の要約は原著論文のabstractではなくプレスリリースの内容から抜粋してみました。
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2012/11/post-223.html
プレスリリース(一部抜粋)
実験では、48人の成人にトレーニングを行い、ある連続的な指の動かし方(30秒間のうちにキーボードのキーをある順番に出来るだけ早く叩く)を覚えてもらいました。そして、この指運動トレーニングをしてもらった直後に、被験者を3つのグループにわけ、“褒められ”実験をしました。ある人は“自分が評価者から褒められる”グループ、別の人は“他人が評価者から褒められるのを見る”グループ、さらに別の人は“自分の成績だけをグラフで見る”グループの3つのグループです。すると、自分が評価者から褒められたグループは、次の日に覚えたことを思いだして再度指を動かしてもらうときに、他のグループに比べて、より“上手”に指運動が出来ることがわかりました。運動トレーニングの直後に褒められることが、その後の運動技能の習得を促したことがわかります。
定藤教授は「“褒められる”ということは、脳にとっては金銭的報酬にも匹敵する社会的報酬であると言えます。運動トレーニングをした後、この社会的報酬を得ることによって、運動技能の取得をより“上手”に促すことを科学的に証明できました。“褒めて伸ばす”という標語に科学的妥当性を提示するもので、教育やリハビリテーションにおいて、より簡便で効果的な“褒め”の方略につながる可能性があります」と話しています。
Sho K. Sugawara, Satoshi Tanaka, Shuntaro Okazaki, Katsumi Watanabe, Norihiro Sadato Social Rewards Enhance Offline Improvements in Motor Skill. 2012; 7 (11): e48174. doi: 10.1371/journal.pone.0048174. Epub 2012 Nov 7.
*オープンアクセスジャーナルですので、どなたでもPDFをダウンロードできます。
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0048174
コメントをお書きください