皆さんおそらく読まれたことがあるとは思いますが、今回は自分の所属する病院での文献抄読会で紹介させて頂いたCochrane reviewをご紹介致します。得られた結果自体はあまり重要では無いとは思いますが、認知機能障害に対する作業療法の現状を如実に反映した内容ではないかと思います。
BACKGROUND
作業療法は認知機能障害の治療アプローチで重要でかつユニークな役割を担っている。作業療法士が認知機能障害の治療として取り得る方法は2つに大別され、治療的アプローチと代償的アプローチがある。脳の可塑性の概念に基づいて、ダメージを受けた脳を再構成し、特定の認知ドメインのトレーニングをすることで患者の機能を高めていくのが治療的アプローチである。代償的アプローチは患者の残存した力を用いることで、低下した機能を補填するものである。作業療法が脳血管疾患の認知機能障害にどのような効果があるのかをまとめたシステマティックレビューは存在しない。
METHODS
RCTでグループ分けが厳格に行われている研究を採用。また脳血管疾患での認知機能障害のOT介入全てを含めた。治療的アプローチでは上やペン、コンピューター、ボードゲームなどを用いた特定の認知機能障害に焦点を当てた治療法があった。代償的アプローチではADLなどで補助具(アラーム、時計、hand-held computerなど)の使い方を教えるなどがある。動的相互アプローチdynamic interactional approachは治療的・代償的アプローチを融合した「第三のアプローチ」で、院内での環境にて実生活の遂行環境をなるべく実現し、治療効果を引き出す手法である。(注釈:環境をセッティングして模倣訓練などがそれに当たるか?)こうした3タイプに文献を分けて検討する(予定だった)。
RESULTS
1639文献が該当したが、たった1文献しか該当しなかった(Carter, 1983)。この文献はRCTで急性期の33名の患者に対し認知機能の治療的アプローチを実施しその効果を検討したものである。Thinking Skills Workbook(Carter, 1980)に基づいたトレーニングである(出版された本もあるが・・・)。視覚走査や視空間マッチング、時間判断(Time judgment)などが効果指標である。ADLの指標はBIを用いていた。しかし、単一文献であったため、これ以上の検討はできなかった。
ちなみに他の文献は「ほとんどがRCTではない」という理由で除外された。
DISCUSSION and CONCLUSIONS
今回、脳血管疾患後の認知機能障害へのOTの効果について検討しようとしたが、基準に見合うRCT論文が1つしか見あたらず、それ以上の分析は不可能であった。見つかった単一文献では、時間判断による認知機能とADL(BI)は治療群とコントロール群で差がなかったとされている。しかし33名という患者の少なさから、より詳細な検討が必要であると考えられる。今後、脳血管疾患後の認知機能障害に対するOTの有用性はRCTなど方法論的に厳しく統制された上で検討されることが必要である。
上述の通り、このリサーチの結果自体には大きな意味は無いとは思います。しかし認知機能と作業療法に関したRCTの論文が殆ど無いということを明確に示した内容だと思います。論文の抽出方法などは今回省略しましたが、やはり認知機能障害に対してエビデンスの高い治療方法があるとは言い難い現状があるのではないでしょうか。注意機能、認知機能、その他の認知ドメインに対して何らかのRCTの研究ができればな・・・と個人的に思っております。
今回は時間の都合上、簡易的な論文要約になってしまいました。申し訳ございません。次回はもう少し実のある内容にできればと思いますので、今回はご容赦頂ければ幸いです。
Hoffmann T, Bennett S, Koh CL, and McKenna KT, Occupational therapy for cognitive impairment in stroke patients, The Cochrane Library 2010, Issue 9
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