ここ最近の飛躍的な解析技術の進歩により、自分の脳活動をリアルタイムに観察することが可能になってきました。この技術は今後、医療場面でも多用されていくことになると思います。今回ご紹介する研究は、この技術を使って人の注意力を高められるか検討したものです。
注意力が落ちると、アクシデントに見舞われたり生産性が下がることがあります。プリンストン大学の研究グループは、注意力の維持能力を高めて注意力が低下する頻度を少なくするために、被験者自身の脳活動によって課題の難しさがリアルタイムに変化する課題を用いて研究を行いました。
参加者は男女どちらかの顔と屋外もしくは屋内の風景の半透明の写真が重ねられた複数の要素からなる画像を連続して呈示されました。被験者はその際、画面に呈示された指示に従ってボタン押しをするように求められました。例えば、“屋内“という文字が呈示された場合は、まず顔ではなく風景の写真の方に注目しなければいけません。更に、屋内の写真が呈示されている時にはボタンを押し、屋外の写真が呈示されている時にはボタンを押さないように教示をされました。
その結果、後頭・側頭葉の知覚に関わるネットワークの活動の情報よりも、前頭・頭頂葉の注意に関わるネットワークの活動の情報がリアルタイムにフィードバックされた際に、注意力が最も向上することが明らかになりました。これらの知見は注意力の低下が認知的能力の限界によるものではないこと、脳活動に基づいた適切なフィードバックによって注意力が鍛えられうることを示唆しています。
Megan T deBettencourt, Jonathan D Cohen, Ray F Lee, Kenneth A Norman, Nicholas B Turk-Browne
Closed-loop training of attention with real-time brain imaging. 2015
http://www.nature.com/neuro/journal/vaop/ncurrent/abs/nn.3940.html
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